「銀座のどこそこにある喫茶店はうまかった!あのときのコーヒーの香りは最高だった!!」
そんな喫茶店世代の方々が、そこで手にする一杯の中にセピア色の記憶を思いめぐらせることが出来るほど、素材・味・演出にこだわり抜いているカフェが八千代台にあるそうなんです。
『エルムから歩いて帰る途中に立ち寄って、一息ついてから家へ向かうんです。暑さが堪える夏はオアシス、寒さの厳しい冬は炉辺のような、心地良い喫茶店。最近セルフサービスのコーヒーショップが多いけれど、このお店は昔の喫茶店さながら、オーナーと私たちお客との間にはちゃーんとコミュニケーションがあってね、つい話しすぎちゃうほどよ。』
近辺に住むエルム帰りのお年寄りにも、いつの間にか馴染んでしまっているというその場所は、八千代台東に昨年12月オープンしたばかりの喫茶店「カフェふくろう」。東洋大平洋チャンピオンという輝かしい経歴を持つ「三谷大和ボクシングジム」前の踏切を渡った先に、洒落た雰囲気の店構えが見えてきます。
店の入口は、濡れずに傘が閉じられるよう奥まった造りに。また、車椅子やベビーカーでも入りやすいようにと、スロープが設けられています。おしゃれな雰囲気ながらも気取りすぎない空間、そしてぬくもりのある木の素材でまとまっている店内は、テーブル2卓とカウンター7席の計13席でレイアウトされています。
『お年寄りの方にも居心地の良い空間をご提供したかったので、特にイスには気をつけました。カウンター席は座面が高くて簡易なイスの場合が多いのですが、それではお年寄りの方ではとても座れません。そこで、肘掛けがついたテーブル用のイスに足を履かせて高さを合わせ、カウンターもテーブルも同じイスをご用意しました。座面が回転するので、いちいち引く必要もありませんよ。』
正面の壁には液晶ディスプレイが付いていて、自然の風景やふくろうなどの動物、リゾート地などが映し出されているのですが、その動きのある映像効果によって、店内の空気が留まることなく新鮮な雰囲気が生み出されているような印象に。
さらに目を惹くのが、お店の名前にもなっている“ふくろう”の置物たち。色々な大きさ・素材のふくろうが、これでもか!というほど所狭しと置き並べられていますが・・・これは全部オーナーが集めたんですか?
『実は父がコレクターでして・・・ちょっと拝借してきたんです。けれどそれも一部だけで、1/3くらいはお客様から頂いたものなんですよ。旅行先などでふくろうの小物などがあると、「ふくろう買ってきたよ!」とプレゼントしてくださるんです。このふくろう、“不苦労”にあやかり幸福を呼ぶ鳥として親しまれているのをご存じですか?他にも夜目がきいて首が360度回り、さらにその大きな眼などから、“世間に明るく視野が広い、先を見通す力がある”として、商売繁盛の守り神としても知られています。そういうこともあって、旅先の土産やさんではよくよく売られているんですね。
ちなみに、夜行性で夜眠らないふくろうは、寝室やリビング、また子供部屋に置くのも良いそうですよ。寝ている間も子供を守ってくれるとされているとか。』
テーブルにはあまり目にすることのないコーヒーの生豆が、グリーンを支える土代わりにグラスへ入れられていました。こんなカーキ色がかった白色の豆が、焙煎で美味しそうな茶色へと変わるのが何とも不思議!ちなみに店の隅には、コーヒーの木まで鉢に植えられていました。
豆の焙煎も、このお店で毎日行っているそうです。
300gまでの豆を焙煎できるこちらの機械を使って、必要な分だけをしっかり遠火の強火でじっくり焙煎してきます。
『大量のコーヒーを生産するメーカーでは、焙煎する量が半端ではありませんから、一気に焙煎できるよう熱風を使っている場合が多いんです。けれど、コーヒーの甘みを引き出すには直火焙煎は不可欠。その差はブラックでいただいたときに、すごくよくわかると思いますよ。カリッと焙煎した新鮮なコーヒーは、砂糖など入れなくても自然な甘さとキレが感じられるんです。』
焙煎は、炭にしていく作業。
あと何秒火にかけるか、その微妙な調節具合で、ガラッと味も香りも変わるそうです。焙煎するほど酸っぱさから苦さに変わるそうで、そのバランスが丁度とれたものをシティロースト(中深煎り)と言うんだそう。そこから十数秒で深煎りの状態に持っていったりと、その調節はとても繊細で感と技量の世界です。
そうして丁寧に焙煎されたコーヒーは、新鮮なうちにお店で提供されます。扱っている豆の種類も、様々な産地の一級品ばかり。どれも常に新鮮な状態で味わって欲しい!と、いつまでも残ることのないよう毎日の焙煎量を変えているんだとか。
早速そのこだわりコーヒーを淹れていただきました。
ストレートのおススメは「エチオピア モカイフガチョフG1(500円)」。エチオピアでは国賓のおもてなしに使用しているプレミアムコーヒーで、上品な甘みとすっきりした酸味が特徴です。
ちなみにこの“イルガチョフ”とは、農園の名前にあたるんですって。よくコーヒーの銘柄を“ブラジル”とか“コロンビア”とか呼びますが、これはお米で言えば“日本米”と言っているのと同じなんだそう。
『日本米のなかでも、コシヒカリやあきたこまち、さらに収穫地によっても分類されていますよね。そうした細かな銘柄までを追って、これは!と思う生豆を仕入れています。』
一方、ブレンドとして用意しているのは、“エチオピア イルガチョフG1”に、“コロンビア スプレモポパヤンスペシャル”と“マンデリン G1ファンシー”をバランスよく配合した「ふくろうブレンド(450円)」。
淹れ方も、ストレートとブレンドでドリッパーの種類を分けています。ストレートは固有の甘みや酸味、苦味などの特徴がよく分かるように、抽出スピードの速いリブがついた1つ穴のハリオを使用。逆にブレンドは、それぞれの豆が長く滞留するように、小さな3つ穴が空いたカリタを使って抽出するそうです。
『抽出に使うお湯の温度にも気を使っています。焙煎当日の豆には80度のものを、その後は1日ごとに1度ずつ温度を上げるんです。古くなる前に新しく焙煎しますから、大体83度程度までで調節していますね。』
とてもレトロな感じの専用お湯差しで、細ーくお湯を注いでいきます。
豆が湿ったところで、まずは30秒ほど置いて抽出可能な状態に蒸らします。そのあと、ペーパーから1cmほど内側を、ぐるぐると円を描くように注いでいきます。そうすることで、ペーパー内に珈琲粉の壁を作り出し、均一に抽出できるのです(お湯だけが落ちてしまうと、味がシャバシャバした感じになってしまうんだとか)。今にもあふれ出てしまいそうに中身がハンバーグ状に膨らむのは、焙煎したてな証拠!新鮮なものだからこそ、ガスが中に入っているんだそうです。
こうして淹れられたコーヒーは、自分の好きなカップで頂くことができるんです。お店で用意された和風・洋風のブランドカップを、それぞれの特徴も書かれた写真付きアルバムから選びます。
『実は以前、大手コーヒーチェーン店で勤務していたこともあるのですが、その時は接客といってもせいぜい5〜6秒、注文の受け答え程度の会話しか出来ませんでした。また、みんな一様に同じカップへと注いで提供するというそのスタイルに、疑問を抱くこともありまして。自分の店を持てたこの機会に、そのとき考えていたことを全部実現してやろう!という意気込みで接客スタイルにも試行錯誤を重ねているんです。
この選べるカップはそのひとつ。見た目はもちろん、手や口に触れる感覚や、カップの厚みなどによって、同じコーヒーでも随分と印象が違いますよ。』
ただ、カップそれぞれの容量が違ってきてしまうことが難点に。そこで、あえてコーヒーはサーバーに入れてお出しすることにしたそう。これでカップに左右されず、平等に配分することが出来ました。サーバーには、平均的な量の2杯分入れてくれるのも嬉しいところ!
まずはモカの最高傑作、イルガチョフG1から!
さらっとした印象ながらも、パンチの効いたお味です。飲んだ後、舌の上でコクが余韻として残るのに、のどの奥に絡みつくような後味はなくすっきりとしています。
コーヒーに添えられてくるのは、ミルクや砂糖のほかに自家製ラスクもついてきます。実はこれが大人気だそうで、お客様の強い希望で店頭にも一袋100円で置きはじめたとか。自家製食パンに、砂糖・バターだけを使ったシンプルなものですが、悪いものが何も入っていないからと、お孫さんのおみやげに買っていかれる方も多く、1日に40袋も売れることがあるらしい!
その人気のラスクは、カリカリすぎず、硬すぎず、甘さほどほどの自然なお味です。これを頂きつつブラックコーヒーを口に含むと、バターの風味がふわぁーっと広がり、ほんのり砂糖の甘みと相まって、またまた違った印象に。これはかなりの好相性!
ブレンドもお味見。
これはまた、ストレートとは随分と違いますね!ものすごく香りが芳醇で、まろやかな印象です。
『サーバーから2杯目を注ぐ頃には、少し冷めてしまっているかもしれません。ですが、美味しいコーヒーは冷めてもうまいものです。冷めて酸っぱく感じるようでは、そのコーヒーが古い証拠です。最近は、美味しい缶コーヒーやインスタントコーヒーが手軽に飲めるので、そうした味に慣れている方も多いと思います。また、お砂糖やミルクが入らないと、酸っぱさや苦味が苦手でブラックはとても飲めない!という方もいらっしゃるでしょう。そうした方々に、ぜひこのコーヒーを口にして欲しいんです。“あれ?このブラックなら飲める!”という一言がいただけるようなコーヒーを心がけています。』
ふくろうでは、コーヒー以外のドリンクメニューもかなり充実しているんです。種類の豊富さというより、その内容に大変なこだわりが・・・。
『どうせコーヒー屋のジュースでしょ?紅茶でしょ??と言われる前に、どれを選んでも美味しい!と思われるものを提供したいと思いまして。例えばオレンジジュースは、季節の柑橘類(夏は愛媛直送の「美生柑」)を生搾りしてお出ししていますし、ココアは数十種類のメーカーを飲み比べ、さらに砂糖などの配合量などにも調整を重ね、オランダのチョコレートメーカー“ドロステ”のココアを使用することにしました。
道具にも気をつかっていますよ。紅茶の抽出には、葉のジャンピングが自然と起こるようにコーヒーサイフォンを使用していますし、限定でご用意している水出しアイスコーヒー(ダッチコーヒー)は、専用機器で8時間かけて落としています。コーヒーは熱と酸素に弱いので、酸化して酸っぱくなりがちですが、水出しで抽出した味わいと香りはまた格別ですよ!』
今日は、特におすすめというそのドロステのココア(500円)も頂きました。お湯で少し伸ばしてから、これまた専用のココア撹拌器で練り上げます。そこへ牛乳や生クリーム、砂糖や隠し味の塩などを入れて、甘すぎない大人向けココアの出来上がり。
練り上げが効いているようで、全く粉々しさがなく、ふんわりした口当たりに仕上がっています。普通に喫茶店でいただくココアを思い描きながら頂くと、そのビターな味わいにビックリします。スッキリしていて甘ったるさがちっとも口に残りません。苦くはないけれど、甘さに飲み込まれることなくコクを堪能できる・・・そう、チョコの純粋な美味しさを堪能できるんです。イメージは、流行りの“65パーセントカカオのビターチョコ”などを彷彿とさせるような・・・。
自家製の「珈琲シフォン(300円)」もおすすめ!
焙煎したばかりの新鮮なマンデリン豆を、さらに通常以上に深煎りしたものを丁寧に抽出。さらに挽きたての珈琲粉をシフォン生地に混ぜ込んで、オーブンで焼き上げたという逸品です。
シフォンというと、ケーキのスポンジ部分みたいだったり、ぼそぼそしていたり・・・というものも多いのですが、ここのは全く別物。しっとりしているのに、フォークを差し込むときの弾力、そしてふわーっとした空気感のあるきめ細やかなシフォン生地なんです。
食べれば一瞬にして、あの淹れたてコーヒーの芳醇な香りが、頭の裏側まで伝いそうなほど!ちなみにこのシフォン、奥様のお母様から受け継いだレシピを基に考案されたものだそうです。
このシフォンやラスクを焼いているのは、コック兼栄養士免許を持つオーナーの奥様。ふくろうでは、日替わりで数種類のパンも頂くことができるのですが、粉から仕入れて焼き上げるパンはコーヒーと並ぶ人気メニュー!特に人気のメロンパンは、日替わりメニューに無くてもお出し出来るように、いつも準備しているんだとか。
基本は6種類ほどのパンから毎日2種類ほどをチョイスしているそうです。バターロールの日は、自家製のリンゴジャムを添えてお出しするそう!ああ、聞くだけで美味しそう・・・。その日によってほかにも用意している種類があるかもしれないので、「今日はどんなパンありますか?」と聞いてみるのがよさそうですね。
さきほどのシフォンをはじめ、コーヒー豆や自家製食パンなどは配送も受け付けています。コーヒーは生豆200gあたり700〜800円、シフォンは15cmホールでの販売で1,800円だそう。中でも人気なのが、Web限定で受け付けている自家製食パン「みみずく食ぱん(1斤・400円)」!
直接取りに行けば商品の代金だけですので、ぜひ問い合わせてみてくださいね。
※デリバリー用の商品紹介はこちら→http://cafe-coruja.shop-pro.jp/
昔からこの八千代台で生まれ育ったオーナー。一度は都内に働きに出たものの、少しずつ高齢化によって活気を失いつつあるこの街を、またもう一度若者の手で元気にさせたい!という思いから、この場所での開業に踏み切ったんだそうです。
都内やチェーン店ではあり得ないような関わりも、自然と生まれてくるんですよ、とオーナー。
『近くにデイサービスの施設があるんですが、そこの施設長さんがよくお見えになりまして。お話しているうちに、この喫茶店をおじいちゃん、おばあちゃんのおでかけ散歩コースに入れてくれるということになりました。
まさに喫茶店世代の方々、お渡ししているメニュー表を眺めながら「今日は何を注文しよう?」と、朝からとても楽しみにしていてくださるそうです。こうした“お出かけ喫茶”も、場所によっては嫌がられたりするかもしれませんが、地元密着でお店を開いているからこそ実現できたことだと思っています。
将来的には、近所の子供たちの誕生日会を貸し切りで出来ればいいなとも考えているんですよ。パンを自分たちで作って、焼きたてを食べてもらったり!お母さん方も、面倒な片付けなどがなくて良いかな?と思いまして。』
自分を育ててくれたこの街に、何か恩返しがしたい!今度は自分たちの手で活気溢れる街にしたい!!と考えていらっしゃるカフェふくろうのオーナーご夫婦。大変親しみやすい雰囲気ながらも、「お客様とは節度を持って、馴れ馴れしさは感じさせないように気を付けています。」とおっしゃるだけあって、とても丁寧な接客をなさっています。
こんな温かい会話や雰囲気で和ませてくれる素敵な空間を、ぜひ気軽に楽しんでみませんか?
【追加記事】
2007年12月に、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)認定コーヒーマイスター試験に見事合格なさったそうです!試験の内容は、コーヒー豆の栽培に関する知識やコーヒーの歴史、豆を生産する各国の情勢から流通経路に至るまで、さらには焙煎方法や豆の保存方法などといった実践的な内容、そしてカップの歴史・・・などといった、ありとあらゆるコーヒーに関する知識を幅広ーく問われるそうで、大変な苦労の末の習得だったとのこと。
胸に光るバッジがコーヒーマイスターの証!
日々勉強!と向上心満載なふくろうさんです。
●CAFE ふくろう 047-485-1621
千葉県八千代市八千代台東1-38-2(地図)京成線「八千代台駅」東口から徒歩7分
営業時間/10:00〜19:00
定休日/毎週火曜日及び第2週火・水曜日(その他不定休あり)
駐車場/有り(1台)
ホームページ/http://cafe-coruja.net/
※カフェふくろうWeb Shop限定!大人気の「自家製食パン」や「みみずくブレンド」などをはじめ、お店のメニューにある自家焙煎コーヒー豆やシフォンケーキを全国一律600円で配送しております。
ぜひご利用ください!→http://cafe-coruja.shop-pro.jp/
〔関連レポート〕
2009年02月17日 さらに美味しくパワーアップ!カフェふくろう
コーヒーもとてもおいしかったし、とてもくつろげるお店でした(^^)
カップが選ばせて貰えるのは嬉しいですね!
シフォンケーキは値段からあまり期待していなかったのですが、
食べてみてびっくり!ふわっふわ☆とても美味しかったです。
本当に、ふくろうさんはお店の雰囲気がすごくリラックスできますよね!一人の時間を楽しみに行っても、何人かで行っても居心地がよさそうな店って、なかなかありそうでないです。
シフォンケーキもただ軽いだけじゃなくて、しっとりして生地がしっかりしてるのにふわふわなんですよねー。
また食べたくなってきました・・・。
そろそろ季節的にココアもいいですね^^